シディ(SIDI)-名車の証
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甲に沿うように足をしなやかに包み込むアッパーに、パワーロスを防ぐソール。
レーサーシューズに求められる性能の基準を、常に作ってきたのがベネト州トレビーゾ県マゼールにあるシディです。
元選手のシニョトリ・ディーノが、自らのブランドを興しました。
サイクリング用シューズとモーターサイクル用ブーツのトップブランドとして、その名を知らぬ者がいない存在に成長しました。
数々の革新的な製品を発表してきましたが、中でも、ソールに釘で固定していたクリートを移動できる画期的な機構を考案し、世界中のシューズメーカーを追従させたのは、もっとも大きな功績です。
最新モデルのエルゴ2カーボンライトでは、光沢感のある高級素材ベルニーチェをアッパーに採用し、ソールは軽量タイプのカーボンライトを使用しています。
ヒールカップはドライバーで固定力の調整ができるという高機能モデルで、特別カラーをまとった限定モデルもあります。
蒸留酒で有名なバッサーノデルグラッパから東へ延びるSS248号線は、有名なシューズメーカーが軒を連ね、登山家、モーターサイクリスト、そしてサイクリストにとってワクワクせざるを得ない道です。
この地域はジロ・デ・イタリアで熱戦が繰り広げられるドロミテ山塊の麓にあり、音は林業関係者のための靴作りが盛んで、その歴史は中世までさかのぼります。
20世紀以降はアルピニストのための登山靴作りが盛んになります。
戦時中は軍用靴を作るなど、モンテベルーナやアーゾロ地域の歴史は、そのままイタリアの靴作りの歴史と言っても過言ではありません。そのアーゾロの町から少し離れたところに、自転車用シューズのトップメーカー、シディの本社工場があります。
朝9時。広報担当者と挨拶をしていると、そこに社長のシニョーリ・ディーノさんが出社してきました。工場の撮影を済ませた後、少しだけインタビューをしたいと告げると、小さく微笑むと「痛い歯は早く抜いたほうがいい。だから、すぐにやろう―」と快諾してくれました。
できることは、すぐにやる。どこの国でも、仕事のできる人の行動に大きな違いはない。創業当時ことを聞くと‥…。
「学校を卒業して、自宅の近所にあったダイバというシューズメーカーで、登山靴やスキーブーツを作っていました。私は農家の出身で非常に貧しかったので、昼間はダイバで、その仕事が終わったあとも、違う工房で仕事をしました。また同時に、地元のチームに所属して、ロードレースにも参加しており、結構、強かったんですよ。仕事ばかりしていたので、"いつ練習しているんだ"と聞かれましたが、真っ暗の中を走っていたのです。そして56年、私は好成績を収めてプロ選手になるチャンスに恵まれました。しかし、収入が保証されていない選手には……」。
プロ選手になるのを諦めたシニョーリさんは、自転車競技からも離れてしまいます。1970年、25歳で独立し、家畜小屋の一角でスキーブーツの生産を開始します。69年にはモトクロス用、ブーツの生産に着手し、順調にビジネスは成功の道を歩みました。しかし、仕事ばかりしていたため、太ってしまい体調を崩してしまったといいます。そして、それがレーサーシューズにとって、大きな進化のきっかけとなります。
「体重が96kgにもなってしまって、医者に運動しろと言われたので、膝に負担の少ない自転車に17年ぶりに乗ったんです。久しぶりの自転車は気持ちよかったのですが、しばらく走っているとヒザに違和感を感じました。この問題を、どうやったら解決できるか走りながら考えて、帰宅して思いついたアイデアを絵にしたんです」。
当時のレーサーシューズはクリートを釘で固定していたため、一度固定してしまうと、簡単には調整できなかった。そこでシニョーリさんは、クリートが可動できる方式を考案した。すぐに特許を申請し、翌年、レーサーシューズを発売します。すると、若手の有望選手、フランチェスコ・モゼールが使用して一気に話題を集めました。
「どうやって彼が私のシューズを入手したのかはわかりませんが、モゼールが使ってくれたのです。すると、翌年には驚くほど多くのメーカーが、私の交換したシステムを採用しました。この成功は大きかったですね」。
ほかにも、"レボリューション"では靴紐を使わず、ベルクロテープで固定するのを世界で初めて市販したり、数多くのアイデアを具現化してきました。シニョーリさんは多くのアイデアを生み出し、革新的な製品をリリースしてきましたが、一方で伝統を重んじる部分もあるといいます。
「私は自分のことを伝統を重んじるタイプだと思っています。でも、世の中の動きは早いので、それに対応していかねばなりません。だから、今後の予測は立たないし、ニーズや問題があれば、それに臨機応変に対応する必要があると考えています。シディのブランドロゴは竜巻をイメージして作られたもので、多くのモノを巻き込みながら、どこに行くかわからない。そういった意味もあります。友達からは"それはオマエのことだろう"と笑われています」。
現在、シューズの生産量はモーターサイクルとバイク用を足して40万足。自転業界ではダントツの生産量を誇りますが、それでも以前と比べて大量生産品に押されているといいます。
「中国製の安い製品や、大手メーカーの参入によって生産数は落ちてしまいました。でも、自分たちの工場で作っているので、小ロットで細かなニーズにも対応できるのが自慢です。生産の一部はルーマニアに移転しましたが、自社工場で作るというこだわりは捨てられません」。
一階にある本社工場では、高級モデルをはじめ多くの製品が作られています。最新鋭の機械が導入された工場は活気があり、しなやかなアッパーと、適度な硬度をもつソールが職人の手に
よって1つになっていく。
工場の片隅にはイワン・バップを始めとする現役選手のほかに、ミゲール・インドゥラインやパオロ・ベッティーニ、ジュリアン・アブサロンなど、歴代チャンピオンの足型も残されています。
今年で創業50年。シニョーリさんが製品開発の陣頭指揮を執ることは減ってきていますが、過去のアイデアを製品作りに活かすこともあるといいます。
「私が考えることは、早過ぎて失敗したことも多いからね」。
無類の仕事好きにして、自転車好きが作るシューズ、それがシディの魅力の秘密のようです。
===【往年の傑作モデル 詳細解説】====
エルゴ2カーボンライト ヴェルニーチェは、ソールを軽量化したニューモデルです。ヒールこは踵を調節する機能が付いています。
レーザーは、光沢のあるアッパー素材が目を惹く、カーボンソールを採用したレーシーなモデルです
ジェニウス5プロは、合成皮革ロリカが、ホールト感と耐久性を高めている永遠の定番ラインナップです。
T2カーボンコンポジットは、通気性を高めるベンチレーションホールが特徴の、トライアスロン専用シューズです。
このブランドは、上記以外も魅力的なモデルを沢山製造しています。カタログでは分からない実際に購入したユーザのクチコミ評判やインプレ、生の声は以下をご覧ください。
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